腎臓の働きは、体内の老廃物や毒素の排泄、血液中の水分・塩分や電解質のバランスを整える、血圧をコントロールする、赤血球を作る働きのホルモンを分泌する、ビタミンDを活性化し骨を守るなどがあります。
日本人の25人に1人は腎臓病の疑いがあるといわれています。糖尿病や高血圧とおなじような一般的な病気です。
腎臓病は、最初自覚症状が少なく、発見が遅れることの多い病気です。そして、腎臓病が進行すると回復することができず、腎機能不全(腎不全)に至り透析治療が必要になります。2011年末では30万人を超える方が透析治療を受けています。
腎機能が60%以下に低下すると心筋梗塞や脳血管障害になる危険が増します。一方、これら心血管病変に腎機能障害を伴った場合は心血管病変が悪化します。このように腎臓病はありふれた病気ですが、恐ろしい病気でもあるのです。
慢性腎臓病には、腎臓そのものが悪くなった場合(慢性糸球体腎炎など)と、糖尿病や高血圧などの全身の病気から悪くなった場合があります。
いずれの原因であろうとも腎臓に異常がおきる、あるいは、腎臓の機能が低下している状態が3か月以上続いているものをいいます。
日本腎臓学会はつぎのように定めています。
1.尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要)
2.腎機能( GFR )が60mL/min/1.73m 2 未満
1.2.のいずれか、または両方が3か月以上持続する。
一般的に、慢性腎臓病の初期診断は、検尿、血液検査による腎機能評価でおこないます。
慢性腎臓病を発症する危険因子に高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、慢性腎臓病の家族歴、過去の検診における尿異常や腎機能異常や腎形態異常などがあります。
慢性腎臓病を予防するには発症前から高血圧、糖尿病などの治療や生活習慣の改善に努めることが大切です。
早期発見には検尿(蛋白尿と血尿)と血液検査による腎機能評価を行います。検診で初めて蛋白尿を指摘されたのちに腎不全にいたり透析を必要とする可能性は5~10%前後と高く、蛋白尿と血尿両方が陽性であれば10年間で約3%が透析を開始しています。自覚症状のない検尿異常だからこそ、その結果を役立てることが大切です。
健康診断で発見される蛋白尿の原因は IgA 腎症(慢性糸球体腎炎のひとつ)が多いのですが、この慢性腎臓病は早期にステロイドや免疫抑制薬などによる治療で改善しうることがわかってきました。このように腎機能が低下する前の早期に発見し治療を開始することができれば、悪化を抑える可能性があります。
一方、高血圧や糖尿病から発症した慢性腎臓病では、おおもとの病気である高血圧や糖尿病を管理することが大切です。
いずれの慢性腎臓病でも血圧を下げることが非常に重要です。そのポイントは減塩(薄味)にあります。血圧の管理目標は 130/80 mm Hg 未満です。
慢性腎臓病治療のもう一つのポイントはかかりつけ医と腎臓病専門医との連携です。検診で蛋白尿や血尿を発見された場合は、かかりつけ医を受診し検査をうけましょう。腎機能障害が進行していれば、すみやかに専門医を紹介受診し、専門医で腎生検をふくめた精密検査をうけ、今後の治療方針を決定します。その後は、かかりつけ医と専門医が連携しあなたの腎臓病の治療を行います。
慢性腎臓病は、自覚症状に乏しく、それだけに検尿をはじめとする早期発見が大切です。早期に発見することで適切な治療を開始し、自らの腎臓を守ることができます。
慢性腎臓病の早期発見と予防(リンク)
平成21年3月8日(日)朝日新聞掲載(PDF形式 860KB)
世界腎臓デー公式ホームページ(英語)(リンク)